名も無き君へ捧ぐ


「はいはい、もうこの話やめよう。ユーレイさんは消えてください」

バシャバシャと顔を洗う。
突き放せば、愛想つかしてそのうち姿を現さなくなるだろう。
そう目論でいた。

昨夜はもう少し楽しく話していたのに、なんでいちいち上から目線で偉そうなんだ。
腹立つことばかりだ。






いつも通り会社へ行き、いつも通り仕事をこなす。


無断欠勤したというのに、気のいい社長のせいもあってかお咎めなしだ。
これもあの、守護霊のお陰だったらどうしようか。

中小企業で平凡で安月給でボーナスもない。
こんな会社とっくに辞めたってよかった。
勤続4年目の事務員。

なのにそんな気が起きなくてなっていたのだ。
あの日を境に。


どうなったっていいと思っていたのに、時間を気にしたり人の顔色伺ったり、買い物もまた値上がった卵にため息ついてたりする。

あのケーキを奮発したせいで今月生活費がキツイことも頭を悩ませる。


でも1番はやっぱり、あいつだ。


消えてって言ったのに、チラチラ視界に入る。
守護霊君。