「はぁ、はぁ……悪いな、栞里。ばあちゃんの病院行ってたら、遅くなった」
黒澤くん……!
肩で息をする彼の姿を目にした途端、目頭が熱くなった。
来てくれないだろうと思っていた黒澤くんが、来てくれた。
それだけで嬉しくて、涙が止まらない。
「まさか、栞里の知り合いの緋山が横峯だったなんて! お前、よくもやってくれたなぁ」
怒りを露わにした黒澤くんが、こちらへ一目散に駆けてくる。
「俺の大事な女を返せ」
──ドキッ。
こんな状況のときでさえ、黒澤くんの言葉に胸が跳ね上がってしまう。
「ハッ。そんな簡単に返してやれるかよ」
横峯は、地面に横たわっていた私を無理やり立ち上がらせると、自分のほうへと抱き寄せた。
そして突然ナイフを向けられ、背筋がヒヤリとする。
「こいつを返すのは、お前と勝負してからだ」
「くっ……分かった。その代わり、栞里のことは絶対に傷つけんなよ」
「それは保証できねぇな」
横峯にナイフを首筋に当てられたまま恐ろしいことを言われ、身体が身震いする。
「よーし。おい、てめぇら……やれ!」
「うぉぉお」
横峯が声を張り上げると、周りにいた仲間たちが黒澤くんに一斉に襲いかかる。