あれから数週間が経った。


中間テストも終わって、気づけば6月。


梅雨入りが近いのか、最近はどんよりとした曇り空の日が続いている。


「雨降りそうだなぁ」


放課後。下駄箱でローファーに履き替え外に出ると、朝と変わらず空は分厚い灰色の雲に覆われていた。


私は、はぁっとため息をつく。


今日は、せっかく塾が休みなのに。


傘を持ってくるのを忘れたせいで、この天気じゃ寄り道もできそうにないよ。


「なーに、しけた顔してんだよ」


昇降口のところで灰色の空を見つめていると、隣に誰かが立つ気配がした。


その人は、黒澤くん。


「雨降りそうだなって思って。私、今日傘持ってきてないから」

「傘なら、俺持ってるぞ?」


黒澤くんが、カバンの中から折りたたみ傘を取り出してみせる。


「雨が降ったら、俺が傘に入れてやるから」

「黒澤くん……」


得意げに言ってみせる黒澤くんが、何だか可愛くて。


私の頬は、思わずゆるむ。