5月になり、ゴールデンウィークに突入した。
この日は祝日で、学校はお休み。
窓の外で風に揺れる桜の木は、鮮やかな緑色の葉をつけている。
「あれ? 栞里ちゃん!?」
「透くん!」
先月のはじめに入塾テストを受けて合格し、少し前から通いだした塾の自習室で、私は透くんとバッタリ会った。
「偶然だね! もしかして、栞里ちゃんもこの塾に?」
「うん。まさか、透くんもここに通ってたなんて。知り合いがいて良かったぁ」
まだ入塾して間もないこともあり、塾での友人が一人もいない私は、透くんの顔を見てホッとする。
「まぁ俺は学年がひとつ上だから、栞里ちゃんと授業が一緒になることはないかもしれないけど。これからよろしくね」
「うん。こちらこそだよ」
私と透くんは微笑み合う。
「そうだ。この間の本屋さんでの参考書、譲ってくれてありがとうね」
あれから透くんと会えていなかった私は、改めてお礼を言う。
「ううん。あのあと、別の本屋で同じのを見つけたからさ。ほら」
透くんが、無事に買えたという数学の参考書を、胸の前で掲げてみせる。
「透くんも買えたんだ。良かった〜」
「ねえ。俺、栞里ちゃんに聞きたかったことがあるんだけど……」
「何?」