桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



「えっ、あっ、はい! 勝手に触れてしまい申し訳ございません……!」


次はばっと深く頭を下げる女子生徒、改め櫻井ひより。

私は少し思考を巡らせた後、口を開いた。


「……ごめん、私、友達作る気ないから」


期待を込めた眼差しで見つめてくる彼女からふいっと目を逸らし、無愛想な口ぶりでそう言った。


それを聞いた彼女は途端に眉を下げる。

数少ない女子の私が友達になってくれないと知った彼女は、落胆、というよりも絶望の表情で床を見つめている。


「……あのー、櫻井さん。大丈夫?」


気持ちのこもっていない声で問いかけ、彼女の顔を覗く。
私の声にはっとした櫻井さんは、すぐさま作り笑いを浮かべて私に向き直った。