桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



そういうものなのかな……。

私はこの時初めて、これまで恋愛をしてこなかった自分を恨んだ。


 ◆


「西園寺さん。私の喧嘩相手になってくれませんか」

「……は?」


ある日の昼休み。

旧校長室に西園寺さんが一人でいるのを見かけて、私は声をかけた。


最近、恋とやらのことを考えすぎて深い睡眠がとれず、ストレスが溜まっているんだ。

それならば前みたいに路地裏にいるヤンキーどもと拳を交えればいいじゃないかと思うかもしれないけれど、私は一度警察にお世話になった身。


もう目はつけられたくない。


「お願いします。この通りです」

「……まあ、なんか意味分かんねえけど。俺も最近体鈍ってきたとこだから、その願い受けてやる」


私たちは校舎裏に向かい、静けさの中向き合った。

初夏の風が二人の間をゆったりと吹く。