おれは御曹司としてこの世界に生まれた。
二つ上の兄はなんでも卒なくこなす、いわば天才だった。
それゆえおれは両親から兄と比べられ、肩身の狭い毎日を送ってきた。
文学、武術、芸術。
どれをとってもおれは兄には敵わなかった。
そのせいで、おれはどんなことにも本気になれなくなった。
最初から負けることを知っていたからだ。
そんなおれが、華恋と出会った瞬間変わった。
華恋の美しさが、その強さが、おれに本気になることの尊さを教えてくれた。
本気になれるものがあれば、世界はこんなにも鮮やかに色づく。
「お坊ちゃま、最近はなんだかご機嫌ですね」
ばあやはすべてを見透かしたような目でおれを見つめた。
「そう? まあ、好きな人ができたからね」
おれはそう言って、柔らかく微笑んだ。
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好き。大好き。愛してる。
翔からもらった言葉たち。



