桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



「君が〝カレンちゃん〟だね? ねえ、そうだろう? ふふっ、ウワサ通り、美しいねえ」


ニンマリと口角を引き上げた賀上は、気色悪い動きをして私に近づいてくる。

殺されるかもしれないというのに、この余裕さ。


───腸が煮えくり返る。


「どうしたのー? ボクチャンを殺したいんだろぉ〜? なら殺しなよ」


真っ暗な双眸が私を挑発気味に見下ろす。

私の指は安全装置を外し、引き金に触れた。


ひんやりとした感触が指先から全身に伝わる。


プルプルと震える手。
強く噛み締めた唇から赤い血が流れる。


世界で一番憎い男が、手を伸ばせば触れられる距離にいる。


私はこんなにも舐められるほど弱いのか。


……いいや、違う。


私は弱くなんかない。
この世界の誰よりも強い。