桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



家を出発する直前まで、黒幕の正体を玲王に打ち明けるかどうか迷った。


だけど最終的に、玲王に迷惑をかけるわけにはいかないという結論に至った。


これは私の戦いであって、玲王の戦いじゃない。


「行ってきます」


屋敷を振り返って、そっとつぶやく。

両親と過ごしたこの屋敷には、幸せだったあの頃の思い出がたくさんある。


もうここには帰れないかもしれない。

そう思うと、ギュッと胸が締めつけられる。


だけどそれでもよかった。

私が今日まで生きてきたのは、この日のためだったのだから。


復讐を果たしたら、この命がどうなろうと構わない。


揺るがない決断を胸に、私は敵の棲むアジトに向かって走り出した。