桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



私は翔の彼女だけど、ホンモノの彼女ではないから。


……ああ、そうか。
自分に連絡がなかったのはそのせいか。


今まで翔があまりに優しく接してくれるものだから、自分がニセモノの彼女だということを忘れていた。


「あの、それじゃあ失礼します」

「あっ、待って華恋ちゃん。これ、翔の住所。ちょっと心配だから、代わりに翔の様子見てきてくれない?」


京さんは走り書きしたメモを渡し、そう言った。


「あ、はい……」


受け取った手前、京さんの頼みを断ることはできない。

私は旧校長室を後にして、紙に書かれた住所を見ながら翔の家に向かった。


 ◆


───ピーンポーン。

おしゃれな豪邸を前にして、インターホンのボタンを押す。