目を閉じて、優しい響きに身を任せた。
そうして穏やかに、静かな響きを残して演奏が終わる。
「アイラブユー」
「……っえ?」
突然聞こえた愛の告白に、私は目を見開く。
「この曲は、クリス・ハートっていうアーティストが歌ってるおれのお気に入りなんだ」
「あ、ああ……曲名か」
「? 最近弾いてなかったから腕落ちたけど、華恋に聴かせられてよかった」
「そうかな? すごく上手だった」
私の言葉に、翔は嬉しそうに微笑んだ。
◆
「華恋、送ってく」
「いいのに」
「華恋のことが心配なの」
「ふーん」
車を運転する翔の横顔を盗み見る。
綺麗に伸ばされた長い髪が開け放たれた車窓から入り込む風に揺られてふわりと舞う。



