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「華恋は何着ても似合うね」
肩を大胆に出す黒のワンピースに身を包んだ私を見て、翔は満足げに微笑んだ。
背中には大きな白のリボン。
このワンピースは、翔が特注で作らせたものらしい。
「なんかスースーする」
「少し我慢して」
「うん」
室内は薄暗く、天井にまで届く高い棚に取り付けられたライトが白く光っているだけ。
私の目の前には高級そうなグランドピアノが鎮座している。
「このピアノ、翔が弾くの?」
「うん、そうだよ。聞きたい?」
「うん、ちょっとだけ」
私がそう言うと、翔はピアノの蓋を開けて椅子に腰を下ろした。
綺麗な指先が鍵盤に触れる。
そして、二人だけの部屋に柔らかで優しい音が響いた。
耳に馴染むメロディーが翔の指先から生み出される。



