「おお、翔。かわいい彼女待たせてどーするの」
「わりい。ちょっと用事あった」
扉を閉めた翔は、迷いのない足取りで私の方に近づいてくる。
「華恋、待った?」
「ううん」
「そっか。じゃ、帰ろ」
その言葉に私が頷く前に、京さんが口を開いた。
「えー、俺たちの相手はなし? 冷たいやつー」
「華恋、気にしなくていーよ。早く帰ろ」
私の手を握ってリュックを背負い直した翔。
私は今度こそ頷いて、鞄を持って旧校長室を出た。
「……よかったの?」
「何が?」
「いや、……その、最近翔私ばっかりだから友情も大切にしたほうがいいんじゃないかなって」
それに私は、あくまで〝ニセモノ〟の彼女なんだから。



