桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



「華恋。おれたち、ホンモノのカップルにならない?」

「ならないよ」

「だよねー」


彼は感情の読めない表情でそう言った。

私たちは付かず離れずの関係のまま、二人だけの時間を過ごす。


 ◆


「いやー、でもまさか翔に彼女ができるとは思わなかったな」


旧校長室のソファに腰を下ろした男が、楽しげな口調でそう言った。
片耳には長方形のおしゃれなピアスが揺れている。


「なあ、お前もそう思うだろ隼人(はやと)

「あー、うん」


黒髪の男はスマホを触りながら頷いた。

私は今、翔に呼ばれてこの旧校長室に来ている。