「華恋ー、次の授業つまらないからサボろ」
私の教室に現れたと思えば、そんな無茶苦茶なことを口にする。
私は考えるよりも先に頭を下げ、了承してしまう。
言う事絶対、自己中心。
私が少しでも逆らうと、すぐに天邪鬼な態度を取る。
それが面倒だから私は素直に従っている。
心の中では、こいついい加減にしろよと拳を震わせて笑顔を保っている。
桑谷に連れられて誰もいない保健室に入る。
今は保健教諭もいないようだ。
保健室の奥、カーテンで仕切られたベッドに腰掛けた桑谷の腕が私の腰に回る。
そのまま引き寄せられ、その膝に座る形になった。
「ねえ、華恋。おれの名前、呼んで」
切れ長の瞳、すっと通った鼻筋、長い睫毛。
形の良い唇が愉しそうに三日月のかたちになる。



