桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



「パパ、ママ……」


二人を呼ぶ声が震えている。

今テレビで報道されていることが現実か、それとも夢か分からなくなるほど私はうろたえていた。


どうしよう。凍ったように体が動かない。

このまま座ったままでいいはずがないのに、私の体は思考に従わず言うことを聞こうとしない。


「だれか、だれかいないの」


数分金縛りにあっていた私は、やっとのことで声を絞り出す。


その直後、部屋の外からバタバタと走ってくる足音がした。
コンコン、と扉をノックする足音が聞こえる。


「……どうぞ」


震える声でそう言うと、静かに扉が開かれ、背の高い男が姿を現した。


「華恋様、お呼びでしょうか」


わずかに呼吸を乱し、肩で息をしているのは私の側近である怜王(れお)だ。


「……ねえ、怜王。聞いた? 私のパパと、ママが……」