この男に近づくのなら、それが一番好都合だ。
偽物の彼女なら、いつだって別れを告げられる。
それに相手を傷つけて逆恨みされる恐れもない。
「偽物?」
桑谷は眉をしかめ、私を見つめた。
その瞳の奥に、不満げな感情がゆらめいて見える。
私が黙ったままでいると、桑谷は不満げな感情を消し、にっこりと微笑んだ。
「いいよ、それでも。それじゃあ今日からおれは華恋のニセモノカレシ、ね」
◆
家に帰ると、想像以上に屋敷の中は私が消えたと混乱状態に陥っていた。
「ただいまー」
私の声に、慌てふためいていたお手伝いさんたちがピタッと動きを止めゆっくりと振り向く。
「「「お、お嬢様ぁ〜〜〜っ!!」」」



