桑谷くんの彼女(偽装)になりました。



「……っ、」


そのワードが頭に浮かんだ時、私は思わず椅子を倒す勢いで立ち上がった。


呼吸が荒い。
両親の仇があの桑谷という男だと決まったわけではない。


しかし、可能性は大だろう。
入学初日にして第一の容疑者が浮かび上がった。


「ねえ、櫻井さん。私たち、友達になりましょう」


語気を強めてそう言えば、櫻井さんは何も疑う素振りを見せずに嬉しそうに頷いた。


それを横目に、私はこれからのことを考える。


櫻井さんと友達になったのは、常に一人で行動してはあまりに悪目立ちすると思ったからだ。

敵があんなにも近くにいるのなら、どんなことにも慎重になった方がいい。


全身の血が騒ぐのを感じる。