大人の男と言っても、彼はまだ高校生なのだけど。
「桑谷さんだ。すげぇ……、オレ、本物初めて見た」
「俺も俺も。ウワサ通り、やっぱかっけえな〜」
「喧嘩も超強いらしいぜ。おれも一戦申し込みてえわ〜」
「ぎゃはは! 桑谷さんはお前なんて相手にしねえよ」
そんな男どもの会話が聞こえたと思ったら、今度は女子のひそひそ声が耳に入る。
「桑谷様だ……っ! はぁ〜、やっぱりお美しいわあ。あんな殿方に見初められる女子はどれだけ幸せ者なのでしょう」
「ふふっ、桑谷様ももちろん素敵だけど、私はその隣にいる京様がどタイプなの!」
「そうなの? 私は断然黒髪派! 西園寺様しか眼中にないの!」
どうやら、あの御三方は早くもこの高校の人気者らしい。
この三笘高校のトップに君臨する生徒は過去十年をさかのぼっても決まったことがないという。
それにも関わらず、女子だけに踏みとどまらず男子にまで慕われている生徒がいるなんて、少し意外だ。



