「あっ、その、ごめんね。急に変なことばっか口走って、お前誰だよって感じだったよね。……それじゃあ、私はもう、行くね」
頬杖をつき、窓から見える外の景色を眺めながら彼女が立ち去るのを待った。
しかし、いつまで経っても目の前の彼女が動く気配はない。
訝しく思って彼女に視線をやると、大きな目に涙をいっぱいに溜め、ふるふると拳を震わし泣くのを耐えていた。
私はそんな光景に少し驚いて、わずかに開いた唇の隙間から小さく吐息をこぼす。
「櫻井、さん……。ごめんね、そこまで傷つけると思ってなくて」
謝罪に慣れていない私はたどたどしい口調で彼女に謝る。
「……っ、ご、ごめんなさい。その、困らせたいわけじゃなくて……でも、実際困らせちゃってるよね」
櫻井さんの背は声を発するごとにだんだん小さくなっていく。



