こっから先ははじめてだから


「もしよかったら酒蔵見学していきませんか?団体さんと一緒なら見学できますよ!」


先輩と顔を見合わせる。私に答えを求めるように、先輩が耳元で「どないする?」って小さく聞いてきた。


「わ、私、見学してみたいです!」
「うん、俺も。」


私に甘い笑顔を見せる憂先輩。そのギャップに店主さんが目を丸くしているのが分かる。


そして後ろで会計待ちをしていた女性二人が、「いい男おる。」とつぶやいたのも分かった。 
  



団体さんは、北陸から来ているお客さんで、歯医者さんの社員旅行で訪れているのだとか。


歯科衛生士さんや受付の人って女の人が多いイメージがあるけど、その通りで団体さんは9割が女性だった。


「よろしくお願いします。」と私が深々と挨拶をすれば、先輩は軽く会釈をするのみ。


でもその素っ気ない雰囲気が、彼女たちの心を掴んだらしい。 

 
厳かな雰囲気のある酒蔵が、酒粕のような香りと共に色めき立つ。



「お兄さん何歳なんですか?東京から来てるんですか??」
「あ、私東京のなんちゃらドーナツ食べたい!お兄さん食べたことあります?」


なんちゃらドーナツと言われて、思い浮かぶドーナツが4個くらいあるのだけど。


いつの間にやら憂先輩の両隣を陣取る歯科衛生士さん二人。その後ろから、彼女たちのスタイルのいい身体のラインを見て見惚れてしまう私。