Side Story 〜葉月まい 番外編集〜

翌日、いよいよ帰国の日。
見送りに来たジョン・F・ケネディ空港で、カレンは真里亜や文哉とハグをする。

「じゃあね、マリア。会えて嬉しかった。またいつでも来てね。フミヤも」
「はい。カレンさん、今回も本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。ニューヨークの冬は寒いので、お身体大切にしてくださいね」
「ありがとう。マリアたちもね」

他のメンバーとも笑顔で握手を交わした。

「皆さんが移住される日を、楽しみに待っています」
「ありがとうございます、カレンさん」

最後にカレンは、住谷と向かい合う。

「それじゃあ。身体に気をつけて」
「ああ、カレンも」

カレンが差し出した手を、住谷は強く握る。
そしてそのままグッと引き寄せて、腕の中に抱きしめた。

「カレン、これからも恋人でいてくれないか?」

耳元でささやかれた言葉に、カレンは息を呑む。

けれど、静かに首を横に振った。

「私、遠距離恋愛は無理なの」
「……ああ、そうだね。カレンはしっかり者に見えて、実は寂しがり屋だ」

言い返そうとしても、なにも言葉が出てこない。

口を開けば涙がこぼれそうだった。

「じゃあね、カレン」

くるりと背を向けて、住谷が去っていく。

(……待って、行かないで!)

そう言って手を伸ばしそうになり、懸命にこらえた。

涙で滲んだ視界から、住谷の背中が消える。

カレンは気持ちを振り切るように、踵を返した。

(こんなの、私は慣れっこよ。いつもドライなつき合い方をしてきたんだもの。今からだって、誰か適当に誘って、軽く遊ぶんだから)

自分に言い聞かせると、ショルダーバッグからスマートフォンを取り出した。

と、なにかがヒラリとバッグから落ちて宙に舞う。

〔なにかしら。名刺?〕

拾い上げると、カレンは目を見開いた。

〔は? なにこれ〕

まじまじと見つめてから、呆れたようにため息をつく。

「なにが 『 I love you ! 』よ。まったく……。日本人なのにキザなんだから」

言葉とは裏腹に、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

名刺をギュッと胸に抱きしめて、小さく呟く。

「 I love you too…… 」

切なさにかすれたその声は、人々のざわめきにかき消されてしまった。