Side Story 〜葉月まい 番外編集〜

「やあ、カレン。このあと二人で飲み直さない?」

パーティーがお開きになると、住谷がカレンに声をかけに来た。

「結構よ」
「じゃあ行こうか」
「は? 断ってるでしょうが」
「ん? Sure! って意味かと思った」

え!とカレンは真顔になる。

「そうなの? 結構よって、断り文句じゃないの?」
「どちらにも取れるよ。それで結構です、とかだと、満足して肯定してることになる」
「そうなんだ」

カレンは頬に手を当ててじっと考え込んだ。

「私、とんだ勘違いをしたまま通訳していたかも。どうしよう、どうしたらいいのかしら」
「珍しいね、君がそんな弱気な顔を見せるなんて」
「だってそうでしょう? 涼しい顔して通訳していたのに、ひょっとしたら正反対の意味を伝えてしまったかもしれないのよ? ああ、私のせいで大事な商談を壊してしまっていたら」
「大丈夫じゃない?」
「どうして言い切れるのよ! 呑気な住谷には分かりっこないのね」

キッと鋭い視線で顔を上げるカレンに、住谷はやれやれとため息をつく。

「じゃあ君の日本語の解釈が間違ってないか、俺がじっくり話を聞くよ。お酒は抜きでね。それならどう?」
「……ええ、お願いします」
「ん。1階のロビーラウンジへ行こうか」
「はい」
「ふっ、しおらしくて可愛いな」
「え? なにか言った?」
「いや? なにも」

涼しげな顔で歩き始めた住谷のあとを、カレンは黙ってついて行った。