Side Story 〜葉月まい 番外編集〜

2月14日のバレンタインデーがやって来た。

夜、サザンクロスとコットンキャンディは、生放送の歌番組に出演することになっている。

そして今日は、待ちに待った火曜日だった。

明日香は朝から緊張の面持ちで身支度を整える。

赤いVネックのニットに、コットンキャンディの3人からもらった雪の結晶のネックレスを着け、オフホワイトのフレアスカートにヒールのあるパンプスを履いた。

最後に左手薬指の結婚指輪に触れて、よし!と気合いを入れる。

「じゃあ瞬くん。夜にテレビ局でね」

先に家を出る明日香が声をかけると、瞬が玄関まで見送りに来た。

「ああ。行ってらっしゃい」

そう言って、明日香の肩に手を置いて顔を寄せる。

「火曜日だから、してもいいんだろ?」

明日香はボッと耳まで真っ赤になった。

「あの、えっと、今はまだだめ。夜帰ってきてから。ね?」
「えー?火曜日はキスし放題じゃなかったのかよ?」
「し放題だと、特別感がないでしょ?ドキドキしなくなっちゃうもん」

すると瞬は明日香を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。

「俺、今めちゃくちゃドキドキしてるんだけど。明日香は?」
「えっ?それは、その。私も……」

うつむくと、瞬は明日香の耳元でささやく。

「じゃあ、してもいいだろ?ドキドキする特別なキスを」

そしてチュッと明日香の耳元に口づけた。

ぴくん!と明日香の身体が小さく跳ねる。

「しゅ、瞬くん、あの」

顔を上げた刹那、瞬は明日香の唇を熱く奪った。

「んっ……」

明日香は思わず目を見開く。
瞬は更に深く口づけながら、ギュッと明日香を胸に抱きしめた。

明日香の身体から力が抜けていき、甘い吐息がもれる。

最後にチュッと音を立てて瞬が唇を離すと、明日香は目を潤ませて、はあ、と色っぽい吐息をついた。

頬を上気させた艶めかしいその表情に、瞬の身体がカッと熱くなる。

たまらずまた熱いキスを繰り返した。

「瞬くん。んん……、もう、だめ」

甘い声でささやくと、明日香は必死に瞬の胸を押し返す。

「仕事に遅れちゃうから。ね?」
「そうだな、ごめん。じゃあ続きは夜にな?」
「うん」

頷くと、明日香は瞬の左肩に手を置いて、チュッと瞬の頬にキスをした。

「行ってきます」

すぐさま身を翻して玄関を出て行く明日香を、瞬は呆然と見送る。

パタンとドアが閉まると、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。

「ヤッベー!なにこれ?ハンパない。キスだけでこんな?中学生かよ!」

顔を赤くしながら、瞬はしばらく身悶えていた。