Side Story 〜葉月まい 番外編集〜

(はあ、まったくもう。俺の奥さんときたら、可愛くてたまらんわ)

あのあと、照れたように笑ってからそそくさと明日香がリビングを出ていくと、瞬はソファの背にもたれて宙を仰いだ。

(大体さ、勘違いしてるだろ。私は未だにドキドキするけど、瞬くんは違うでしょ?って。俺だって明日香にキスする度にドキドキしてるっつーの!)

結婚して1年以上経つが、瞬は毎朝目が覚めて隣に明日香がいることに、信じられないほどの幸せを感じていた。

(俺がどんな想いで毎朝おはようのキスしてると思ってるんだ?夢じゃない、明日香がそばにいてくれるんだって確かめたくて、奇跡みたいな日々に感謝して、めっちゃ愛を込めてチュウしてるのに。挨拶ついでにサラッとなんてしとらんわ!)

それに明日香は、結婚してからどんどん綺麗になっていく。

チーフデザイナーなんだから、さすがにもうスッピンとスニーカーはやめなさい、と陽子に言われたらしく、紗季や陽子が用意した女性らしい服を着るようになり、メイクも軽くするようになった。

その上、内面から滲み出るキラキラしたオーラと、真剣に仕事に打ち込む明日香の表情は、時折現場で見かける度にドキッとさせられる。

(今日もなんだかADさんと親しげに話してたしな)

ランスルーに向かったスタジオで、何やら盛り上がって話し込んでいた明日香と男性ADの姿を思い出す。

あの時瞬は、俺の奥さんだぞ!と叫びたくなる気持ちを必死に抑えていた。

(週に1回しかキス出来ないなんて、到底無理だ)

だが明日香の「私、瞬くんに少しでもドキドキしてもらいたくて……」という言葉を聞いて胸がキュンとした。

(あんな可愛いこと言われたら、頷いてやりたくなる。けど絶対に週1キスは無理!)

うーん、と腕を組んで考えてから、ニヤリとほくそ笑む。

(バレなきゃいいよな?)

そうだ、こっそり明日香が寝ている間にすればいい。

瞬は悪代官のように、クククッと笑いを堪えていた。