Side Story 〜葉月まい 番外編集〜

「もう12時か。早く寝ないとね」

食後にソファでコーヒーを飲みながら、明日香は時計を見上げた。

生放送の歌番組の日は、帰宅して夕食を食べただけでこんな時間になる。

「明日香、先に風呂入りなよ」
「ううん、瞬くんのあとでいいよ。疲れてるでしょ?」
「俺は明日の入り時間も遅いし、これから台本読むから。明日香は先に寝てな」
「そう?じゃあ、そうさせてもらうね」
「ああ。お休み、明日香」

瞬は明日香を抱き寄せて優しくキスをする。

するとまたしても頬を赤らめたあと、明日香はおずおずと視線を上げた。

「あの、瞬くん」
「ん?なに」
「あのね、これからは、その……。キ、キスは、週に1回に……しません、か?」

は?と、瞬は声をうわずらせて固まる。
あまりに突拍子のないセリフに、頭がついていかなかった。

「明日香、思考回路の途中経過を話してくれ。どこがどうなったらそんな話になるんだ?」
「えっとね。今日、あみちゃんが言ってたの。優斗くんとつき合って1年ちょっとで、マンネリというか、新鮮味がなくなってきたって。手を繋いでも、前みたいにドキドキしなくなったって。りなちゃんが、それだけお互い心を開いた、かけがえのない存在になったってことだよって言って、そうだなーって私も納得したんだけど。でも、ね……」

そう言って明日香は、また恥ずかしそうにうつむく。

「私は未だにドキドキするの。瞬くんに、その……キスしてもらったら。だけど瞬くんは違うでしょ?サラッとごく自然に振る舞ってるもん。なんか、あの、こんなこと言うの本当に恥ずかしいんだけど。私、瞬くんに少しでもドキドキしてもらいたくて……」

それ以上は続けられずに真っ赤になって顔を伏せる明日香に、瞬はしばし呆然とする。

「あの、瞬くん?」

沈黙に堪え兼ねた明日香が上目遣いに見上げてきて、瞬はようやく口を開いた。

「……明日香は平気なの?週に1回だけで」
「ううん、平気じゃない。そんなのもう、何回でもして欲しい。でもそしたら、それこそ挨拶ついでみたいになっちゃうでしょ?おはようって言うのと同じ感覚でチュッて。私、瞬くんにマンネリだなって思われたくないの。週に1回なら、少しは特別感があるかなって思って……。私の考えてること、変かな?」
「うん、だいぶ変」

ガーン!と明日香は打ちのめされる。

ううっと目を潤ませる明日香を、やれやれと瞬は抱きしめた。

「分かったよ。じゃあしばらくは週1回な?」
「うん。それでもいい?」
「よくないけど、がんばるよ。じゃあいつから?さっきしたから、今週はもうナシ?」
「うっ……、それだと辛い。今から最後のチュウして。そのあとは来週の火曜日ね」
「分かった。じゃあ、1週間分のキスな?」
「うん」

瞬は明日香の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を寄せる。

目を閉じた明日香の顔を愛おしそうに見つめてから、愛を込めて長く深く口づけた。