片翼を君にあげる④


その、"もう一つの理由"を察したのだろう。
俺のプロポーズの言葉に一瞬驚いたレノアは、グッと本当の気持ちを飲み込むかのように顔を歪ませて、首を横に振った。

「っ、駄目……ッ。
私、それは……受け取れないっ」

「……何で?」

何でーー?
意地悪な質問だとは分かっていた。
でも、俺は引かない。もう一度問いかける。

「俺の事、嫌い?」

レノアが首を横に振る。

「結婚相手として不安や不満がある?」

涙を流しながら必死に首を横に振る彼女の気持ちが分かりながらも、俺は問いかけ続けた。
しっかりと、レノアの気持ちを彼女の口から聞きたかった。

「じゃあ、なんで?」

「っ、……嫌、なの」

「何が?」

「貴方はまた……私の為に身を削る(片翼を失う)んでしょう?」

「……うん。そうだね」

俺は、よくやく理由を口にしてくれた彼女に、包み隠さず素直に答えた。

片翼を失うーー。

これが、俺がこの場でレノアに結婚指輪を渡すもう一つの理由。
そして、俺のプロポーズをレノアが拒む理由だった。

病により余命があと僅かなレノア。
彼女の過去、琴李(ことり)もかつてそうだった時、天使はその片翼を彼女に与えてその命を救った。
それと同様に、レノアを救う為には同じ方法で寿命を伸ばす必要がある。

ーー……けど。
俺には、天使のように特別な能力(ちから)が宿った翼は生えていない。
だから、"その翼の代わりになるもの"が必要だった。

その代わりになるものとはーー……。

「私の為に……っ、貴方の命を削らないでッ」

"俺の残りの寿命"。
その半分をレノアに分け与える能力(ちから)を結婚指輪に注いで、俺は彼女を救おうとしていた。

天使の血を受け継いでいるとはいえ、稀血(まれち)とはいえ……。正直、自分の寿命があと何年か、なんて俺にも分からない。
普通の人間と同じかも知れないし、もしかしたら天使のように長生きかも知れないし、はたまた短命かも知れない。

そんな俺の寿命の半分をレノアに与えるーー。

未知数過ぎて、分からない事だらけだ。
幸か不幸か、時が過ぎてからしか分からない。