でも、今はーー……。
触れたい、と思った。
俺は眠っている彼女の傍らへ行くと跪き、彼女の左手を両手で包み込むようにしてそっと握った。
「……レノア」
今までよりも更に深い気持ちを知る。
その愛おしい名を口にすると同時に、俺の瞳からは涙が溢れて、落ちた。
すると、その涙が彼女の手の甲に落ちた瞬間に……。
「ーー……ツ……バ、サ?」
目を覚まして、彼女が俺の名を呼び返してくれた。
俺を映す彼女の瞳もあっという間に潤んで、目尻に涙が伝う。
でも、目が合った俺達は微笑み合っていた。
何だか切なくて、胸が締め付けられるようなのに……。でも、何だか幸せで、胸が暖かさでいっぱいになっていたんだ。
ーー……ああ、そうか。これが愛だ。
レノアの事は、幼い頃から好きだった。
ずっと好きで、大切で、特別で……。でも俺には、それが女性としてへの想いなのか確証が持てずにいた。
けど、やっと分かった。
「レノア、愛してる。
俺と、結婚してほしい」
綺麗な夜景も、豪華な食事も、抱えきれない程の花束も……。本来プロポーズの場に似合う素敵な雰囲気に相応しいものは一切なかった。……けど。
俺と君が居れば、それだけでいいーー。
俺はポケットから指輪の入ったケース取り出すと、開いて中の指輪を見せながら、そう言っていた。
レノアの本当に父親であるアクセサリーショップの店主さんが造ってくれた指輪。
プラチナで出来た輪が並んで二つ。俺とレノアの、二つで一つの指輪。
普通、こう言う時に渡すのはダイヤや誕生石を使った大きな宝石の付いた婚約指輪だろう。
でも、俺が用意したのは結婚指輪。たまにしか身に付けない結婚指輪よりも、常に身に付けやすい結婚指輪は、俺の決意の証。
常に君と共に在るーー。
そんな想いが込もっていた。
そして、俺がこれを贈るのにはもう一つ理由があった。



