《ツバサ、ありがとう。
あとは、頼んだぞーー……》
そう天使に言われたのが、
意識を失う前なのか、
夢の中なのか、
目が醒める直前だったのか、
……分からなかった。
ーー……
………………
……
……………………。
「ーー……っ、……?」
薄っすら開けた瞼。
ボヤけていた視野。
「……。
……、っ…………え?」
鮮やかな、色のある世界にハッとして身を起こすと、自分の瞳に映るのはジャナフと一緒に訪れた場所。
そこは叔父さんの別荘であり、かつて曾祖父さんの邸宅だったシャルマ邸の書庫だった。
……帰って、きた……のか?
現実の世界に帰って来た。
そう思った俺が辺りを見渡すと……。
「!……ジャナフ!
おい、ジャナフ!大丈夫かっ……?!」
すぐ傍で倒れているジャナフの存在に気付いた。
抱き起こして語り掛けると、幸いすぐに目を醒まして「ツバサ?」と、俺の名前を呼んでくれた。
俺が天使と時間を共にしている間、ジャナフとは離れ離れだったから心配だったがどうやら大丈夫だったようだ。
ジャナフも無事に意識を取り戻して、その様子にホッとした。
……が。俺はすぐに、"ある違和感"に気付く。
自らが吐く吐息と、ジャナフが吐く吐息が白いーー……。
「っ、まさか……ッ」
バッと立ち上がり、窓に駆け寄ると外を眺めた。
そこに広がるのは信じられない景色。ここに来た時には生い茂っていた木には、緑の葉どころか茶色い葉も無ければ、辺りに咲いていた花もない。辺りは薄暗く、チラチラと雪まで降っていた。
「っ……。
…………。嘘、だろ……?」
ポケットから取り出して画面を確認しようとしたが、ポケ電の電源は落ちていて真っ暗。電源ボタンを押しても反応はない。
俺は恐る恐る、腕にはめている腕時計を見た。その日付けを見て、更に驚く。
そこに表示されていた日付は、俺とジャナフがここへ来てから半年以上過ぎているーー。
つまり、春だった季節が夏を飛び越えてすでに冬を迎えていたのだ。



