いや、私相手に本気なんて。男よりイケメンと言われている私相手に付き合うのが本気なはずが、いやでも志彗先輩は自称私よりイケメンだし、いやというか自称じゃなくて少なくとも私は志彗先輩はすごく恰好いいと思うし、だから志彗先輩的には問題ないのかも……。
じゃなくて、そもそも、質問は“らしくない”かどうかであって、別に、付き合うということを提案されたわけじゃない。
そう自分に冷静に言い聞かせるまで、一体何十秒かかっただろう。志彗先輩に連れて来られてからというものの、心臓がちぎれそうだったり顔が火傷しそうだったりと、捻挫以上にとんでもない体の不調を起こされている私は、ついに頭までおかしくなってしまっていた。
だから、志彗先輩の質問に対してどう答えればいいのか分からなくて。
「……らしくないです」
男よりイケメンと言われている私が誰かと付き合うなんて、それも入学してたった1ヶ月で、学年で一、二を争う問題児と有名な先輩と付き合うなんて、全然らしくない。
でも、志彗先輩の表情は変わらなくて、もし変わらない理由が私の答えにがっかりしたとかなら寂しくて、志彗先輩に認めてほしくて。
「……けど」
「けど」
「……らしいもらしくないも、ない、です……?」
志彗先輩にもっと近づいてみたい気がして、ボソボソと自信なく付け加えた。
「そんじゃ決まりね」
「え? 決まり?」
なにが? なにが決まった? 呆然と座り込んだままでいると、志彗先輩はポンポンと放り投げるように余ったものを引き出しに放り込みながら。
「付き合うってことで。よろしくね、碧衣ちゃん」
まるで「また明日ね」と同じような温度で、その白い歯を見せ、いたずらっぽく笑った。



