「だから碧衣ちゃんが捻挫なんてらしくないとか言うけどさ、そういうドジっちゃうのも碧衣ちゃんじゃん。そんで、それを誤魔化したくて肩肘はってる碧衣ちゃんも碧衣ちゃん。らしいもらしくないもないっしょ」
らしいもらしくないもない。そんなことを言われたのは初めてで、というか、今まで真逆のことしか言われたことがなくて、何を言えばいいのか分からなくて口を閉じるしかできなかった。
結局、足を持ち上げられたことに抗議する間もないまま、志彗先輩は私の足をそっと床に下ろした。
「はい、おしまーい」
「……ありがとう、ございました」
「これ貸しね。俺が本当に怪我したら今度は碧衣ちゃんが誠心誠意手当してね」
押し売り文句みたいなことを言うのは、きっと私が畏まってしまわないように気を遣ってくれているからに違いない。志彗先輩って、本当に意外とよく気が付く人なんだ。
そんなことを思って油断していたせいで。
「あ、ちなみに碧衣ちゃん的にはさ、俺と付き合うのは“らしくない”の?」
「え!」
とんでもない質問にとんでもない大声が出てしまった。
え? え、いまなんて? 志彗先輩と付き合う? 私が? 何かの冗談……かと思うものの、目の前の志彗先輩はいつもどおり緩くにこにこ笑っているだけだ。これは冗談か本気か……どっちか。



