「……すみません」
「ん、なにが?」
パサッ、と湿布の切れ端が机の上に放り投げられた。それを視界の隅で追う私は俯いてしまっていて、志彗先輩の顔は見えていなかった。
「……そうやって自分でキャラ作ってるのに、キャラじゃないって言われて心外って言うなんて、何様って感じだなって思って」
「俺、嫌いな言葉あってさ」
ひょいと、足が持ち上げられた。志彗先輩の膝の上に自分の踵が乗っている、そのことに気付くまでしばらくかかるくらい、ごく自然な動作だった。
「“らしくない”とか“キャラじゃない”って、すげー失礼だなって」
「……失礼、ですか?」
「だって、お前が俺の何知ってんのって思うから」
それは、私も志彗先輩のことを何も知らないと、そういう意味ですか? そう訊ねたくとも口を挟ませない空気があった。そのせいで、志彗先輩がさも当然のように自分の膝の上で私の足に湿布を貼って包帯を巻いていく、それを止める術もなかった。
「相手の全部なんて、分かんないじゃん。それなのに、自分が知らない一面見ただけで“らしくない”って幻滅するのって、すげー自分勝手じゃん。だから俺、“らしくない”とか“キャラじゃない”って言うやつ、すげー心狭くてヤなヤツだなって思う」
口を噤んでいるうちに、志彗先輩は器用に足首を固定してくれた。ちゃらんぽらんと適当な言動でお茶を濁してばかりの志彗先輩の、“らしくない”一面だった。



