イケメンとは何度も言われたことがあるけれど、きれいと言われたのは、初めてな気がする。千切れそうになっていた心臓は、まだ高鳴っていた。
「……男っぽいので」
「そう? 高校生ってさァ、意外と男と女の違い出るから。前も言ったけど、碧衣ちゃん見て男とは思わないっしょ」
そうではなく、例えば性格とかが“イケメン”らしいので。続ける前に、志彗先輩は湿布とかを手に、私の前に椅子を引いて座り込んだ。少し俯き加減になって湿布にハサミを入れる、その姿は妙に絵になった。
「それより、捻挫黙っとくのやめな? 癖になるよ、七瀬がそうだから。アイツ、ああ見えてどん臭いとこあってさあ、中学のとき何度捻挫認定されたことか」
「……部活は休むつもりでしたし、帰りに薬局に寄って湿布は買おうと。……捻挫なんて、らしくないし……」
なにがそんなに自分でもイヤなんだろうと思ったけれど、考えてみれば“アオイが捻挫なんて”と珍しがられるのは“イケメン”の裏返しだからだ。捻挫するなんてアオイらしくない、アオイはいつだってそつなくなんでもこなしてみせるイケメンなのに、そんな言葉の裏側を警戒していた。
ああ、そうか、そうだったのかも。不意に言語化できて、つい、喋ってしまった。
「だったら最初から“イケメン”って言われるようなキャラクターづくりをしなきゃいいのにとも思うんですけど。でもついそういうことしちゃうし、先輩と会ったときの……痴漢の事件とか、見ないふりするのも違う気がして……」
はたと、自分語りが過ぎたことに気が付いた。顔には、別の意味で熱が上ってくる。まさしく“らしくない”恥ずかしいことをした。
痛々しい。真っ先に浮かんだ言葉がそれで、膝の上で拳を握りしめた。



