まるでそれを察したかのように、梨穂がそっと私の顔を覗き込む。
「……ね、アオイ、教室戻ろ」
「あ、うん、そうだね……じゃ、あの、失礼します――」
「あーおいちゃん、ちょい待ち」
そうだ、梨穂は先輩達が苦手なんだから、立ち話は避けないと。軽く会釈して立ち去ろうとして、志彗先輩に肩を掴まれた。
ぶわっと、そこから一気に熱が広がる。私の肩を丸ごと掴める大きくて骨ばった手、しかもいまの私が半袖の体操服姿なせいで、体温が妙に生々しく伝わってきて、まるでそこから熱を移されているかのような――。
「俺、足やっちゃってさあ。碧衣ちゃんちょっと手当してよう」
「え?」
「なんでお前が怪我してんのを後輩が面倒見てやんなきゃいけないんだよ」
「いえそれは構わないのですが、私は……その、あまり手先は器用では……」
「いーからいーから。ね、碧衣ちゃん借りてくね――細尾さん」
なにか企むような悪戯っぽい笑みを梨穂に向け、志彗先輩は――その腕を軽々と私の背中に回した。ぞわぞわと、緊張で背筋が震えたし、全神経が触れ合っている部分に集中した。
でも、そっか、志彗先輩も捻挫したなんて、そんな奇遇なこともあるんだ……。ちょっとだけラッキーかも、頬が熱いのを自覚して必死に視線を俯かせ、そんなことを思いながら保健室へ行くと「はい、そこ座ってー」と肩を組んだ手にそのまま着席させられてしまった。先生も、他の生徒もいなかった。



