年を追うごとに弱まっていく白玖斗の力を補うために呼ばれることになったのが、龍神島の花嫁。
十年に一度、黄怜の眼が海の村の娘から花嫁を見極める。選ばれるのは、生まれながらに強い霊力を持った者。
海が凪ぐ朔の夜、白玖斗は海の村からきた花嫁から霊力を受けとる。定期的に霊力を受け取らなければ、白玖斗の神力はやがて尽きてしまうからだ。
龍神島と陽葉の育った村の周囲は、海があまり穏やかではない。それでも村の人たちは近海であれば漁を行うことができる。
それは、白玖斗の神力で海を押さえているからだ。
もし白玖斗の神力が尽きれば、島と村を嵐が襲い、一瞬のうちに海に呑み込まれる。
龍神島と村を守るために、人間の花嫁の霊力は必要不可欠なのだ。
白玖斗に霊力を渡したあと、花嫁にはふたつの選択肢が与えられる。
ひとつは、龍神島での記憶を消して、次にくる朔の夜に人里に帰ること。
もうひとつは、龍神島に残り、五頭龍の誰かの妻となり、生涯を捧げること。
これまで人里に戻った花嫁は数人。ほとんどの花嫁は、龍神島に残り、蒼樹や紅牙の邸宅で不自由ない生活を送っているという。



