冬薔薇の戀

 その後、吾涼と薔子は屋敷で出会うたびに肌を重ねていった。
 夜、互いの仕事が終わった後、示し合わせたように薔子は吾涼の一人部屋へとやってくる。
 いつでも庭の様子が確認できるようにと、中庭に設置された茶室の隣に、吾涼の部屋はあった。
 薔子が古代紫色《こだいむらさきいろ》の御高祖頭《おこそず》を被り、人目を忍んで吾涼の部屋の戸を、こぶしで二回叩くのが合図だった。
 夜の闇の中、静かな音を立てながら戸が開くのと同時に、薔子が御高祖頭を、その白いゆびさきで、すっと持ちあげる。
 彼女の横に流した前髪から、猫のようにつりあがった大きなひとみが覗く。淡い月のひかりを受け、彼女の瞳の膜がうっすらと濡れてきらめいているのが、吾涼の熱を誘った。
 雪のようにしろいため、暗闇の中でもひかっているように見える彼女の手首を、音も立てずに掴むと、そのまま彼女を部屋の中に引きずり込んだら、やることはひとつである。
 薔子のからだは、抱くたびに艶かしさを増してゆき、吾涼を彼女のあまい水の中へと巻き込んだ。
 激しく出し入れを繰り返していると、初めはちいさかった彼女の嬌声は、深みを増して高く、大きくなってゆく。

「声ぇでかい」

 眉を寄せ、鬼のような形相《ぎょうそう》で、ただ静かに薔子を犯していた吾涼は、時折薔子の高ぶりが理性で抑えられなくなると、片手を彼女の口に当て、外に声が漏れないようにやわらかく塞ぐのだった。
 薔子は口を押さえられると、からだの違う部分が感じてしまうようで、両手を己の背後に回し、上半身を起こすと、くん、と白くうすい腹を張って、中に入った吾涼のそれを締め付ける。
 吾涼はてのひらに感じる薔子のくちびるの濡れ具合と、つややかさ、うすく開いたくちと、鼻から漏れる暑い吐息でさらに昂《たかぶ》ってしまい、より激しく彼女への挿入を繰り返す。
 薔子の波と吾涼の波がぶつかり、激しい大海のうずとなって互いを巻き込んでゆく。
 吾涼は、薔子を抱くたびに己の中の嗜虐心《しぎゃくしん》が高まってゆくのを感じていた。
 それは、自分を挿入したときに薔子がふるわせる弾力のある尻が、部屋の小窓から漏れいづる月光を浴びて、白くひかっているのを見たときだったり、頬を赤く染め、歯を食いしばりながら、吐息を漏らして、くるしげにまぶたを伏せている彼女のまつげの先を見た時であったり、ゆらゆらと揺れるたわわに実った乳房を、片手で鷲摑みにした時であったりした。
 その度に吾涼は、目にしたこともない百合子の裸体を彼女に重ね、罪悪感を感じながらも、邪悪な笑みを浮かべていた。舌先をわずかにくちびるから出し、上唇を舌舐めずりするほどに。

 彼らのゆがんだ関係は、幾日か続き、このまま互いがたがいの体から離れられないほど沼に沈んでゆくのか、と思い始めていた刹那《せつな》、唐突に終わった。