「い……おい」
前方から聞こえてきた声に、パッと前を向く。
すると、目の前にいたのは──九条くん。
「あっ、えっ!」
「さっきからずっと声かけてんだけど」
「えっ⁉」
どうしよう、全然気づいてなかった!
「ごめんなさいっ、あのっ、わたしっ」
声に気付いてなかったこと、わたしが九条くんのパートナーなこと、そもそもわたしの成績が悪いこと。もう何から謝ったらいいのか分からなくて、口をパクパクさせる。
そんなわたしを、九条くんはつまらなさそうにずっと見ていて。
結愛ちゃんのことを考えている場合じゃなかった。
わたしはわたしのことを考えなければならなかった。
「あの、えっと……」
目の前の九条くんを、恐る恐る見上げる。
サラサラの黒髪に、切れ長の二重、怖いほど整った顔立ち。
勉強もスポーツも出来て、家柄も良くて、一年生でプリンスに選ばれた、みんなの憧れの人。
そんな人が、わたしのパートナーだなんて。
もし万が一、成績が上がらなかったら……きっとタダじゃすまない。
いっそ、このまま退学した方が楽なんじゃないかと一瞬迷う。でも──。



