「あ、そうだ航平、証人になってよ。」
亮ちゃんが、小さく折りたたまれた婚姻届をジーパンのポケットから取り出して、机の上に置く。
「お前さあ、」航平が、吸っていたたばこを灰皿で押しつぶして、婚姻届を持ち上げる。「ポケットに婚姻届入れて持ち歩く奴いる?しかもこんなしわっしわにしちゃってさぁ……。あと居酒屋の汚ねえ机に置くなよ、油まみれになるだろうが。」
「いいだろ別に、役所に提出するだけなんだから。」
亮ちゃんが、机にアンケート用に据え置かれたボールペンを掴んで、「ん。」って机の上に置く。
航平が肘をついて煙草を吸いながら、そのボールペンを握り、ハァ、って息を吐く。
ボールペンをトン、って机に置く。私を見て亮ちゃんを指さす。
「いいの?本当にこいつで。」
「おい。」
亮ちゃんが口を尖らす。
「うん、いいよ。」
私が言うと、亮ちゃんが、あらららって嬉しそうな顔をする。
航平がふーんって口をへの字にしながら名前を書く。
「へいへい、よかったね〜。」
油まみれの、しわくちゃな婚姻届に、大切な人の名前が並んだ。こんな幸せなことない。



