言われるがまま、一生懸命息をしてみる。
数分も経てば、私の呼吸は収まってきた。
ようやくまともに話せるようになったので、感謝の言葉を言わなきゃと思い、口を開く。
「ありがとう、染野くん……っ」
あのとき、染野くんが来てくれなければ、私はどうなっていただろう。
地面に強く頭を打っていたかもしれない。
もしかしたら、そのまま来た電車に轢かれていた可能性だって……。
想像も、したくない。
私は明日をこの世界で、生きることができなかったかもしれない。
「助けてくれて、ありがとう……っ!」
涙でぬれた瞳で、下手くそな笑顔をつくる。
「どういたしまして」
にっこりと穏やかに笑った顔が、ひどく綺麗だった。

