もう、一樹くんに抱え込んでほしくない。
ずっと笑っていてほしい。
すると、急に一樹くんは私をがばっと抱きしめて。
「……っへ」
「なんで玲奈は、俺が欲しかった言葉をくれるの……」
「なんでって……、一樹くんが大切だからだよ」
私がそう言うと耳元で一樹くんがふっと、息を吐いたのが分かった。
「……あのさ、俺が女嫌いになったのはさ」
「……うん」
「正直よく分かんないんだよね。
俺になってから、なんとなく女と関わらなくなって、気が付いたら、ダメになってて」
「そうだったんだね」
「うん……」
そういえば、今までの全部に合点がいったな。
一樹くんが中二のときに私を嫌いだと言ったことも、駅で助けてくれたことを覚えていなかったことも。
私が家族に対してほほえましいと言ったら、複雑そうな顔をしたこと。
お母さんが言っていた同僚さんの名字が染野ではなく、三橋だったこと。

