もう三人の声を聞くことはできない。
もう、会うことなんてできない。

そう思った瞬間、今まで流れてこなかった涙が、ぽろぽろと瞳からあふれ出してきて。


「母さん、父さん、瑞樹……っ」

「いっちゃん……」


上半身だけをベッドから起こして、僕はその場で情けなく涙を流し続ける。

そんな僕へ、優穂さんは眉を下げながら近づいてきた。

だけど、そんなことなんて気にせず、僕は止まらない涙を流した。


「なんでだよぉ……っ、なんでいなくなっちゃうの……っ」


とめどなく涙を流して泣いている僕の背中を、優穂さんは何も言わずになでてくれた。


「わぁぁ……っ父さん、母さん、瑞樹……っ」

「……っ、いっちゃん……」


すぐそばで、優穂さんの鼻をすする音が聞こえた。
だけど、気にしてなんていられない。

涙が完全に止まった頃には、もう空は暗くなろうとしていた。


──────────


母さんと父さんと瑞樹は、もういない。

そのことを痛いほど痛感してから、僕は変わった。