「ごめん、ちょっと行きたいところがあって……」
だから、とっさに思いついた嘘を告げた。
それから、瑞樹の頭にぽんと手をのせて優しくなでる。
「ごめんね、瑞樹。
兄ちゃんはちゃんといるから安心して」
「うん……、うわぁん……」
相当心配かけちゃったんだな……。
それこそ、本当に申し訳ない。
泣いている瑞樹を見て、もらい泣きをしてしまいそうになったから、僕は笑ってごまかした。
「さあ、一樹、家に帰ろう」
「そうね。ご飯を作らなくちゃ」
「……っ、うん……!」
それから、三人ならんで家路をたどる。
他愛のない話をできることが、幸せだと思った。
どうして僕は、みんながいなくなっただなんていう錯覚を見たのだろう。
本当、悪い夢だったんだろうな。
幸せな想いで満たされているうちに、家に着いた。
それから、僕は家の戸を開ける。
「母さん……?」
そこで、目が覚めた。

