無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる



気が付いたら、僕は優穂さんと秋良さんの家にいた。

このときすでに僕は、事故の日を境に半年間の記憶を失っていた。
精神的なショックから来るものです、とお医者さんから説明を受けて、僕たちはそれを知ることになったのだ。

だから……、朝倉さんを好きだと思ったことも、惹かれ始めていたころの記憶も失った。

そんなある日のことだった。


「一樹ーっ!どこにいるんだ!」

「一樹!どこにいるの?いたら返事して!」

「兄ちゃぁん……!」


気が付いたら、街の真ん中に立っていた僕。
遠くの方から、父さん、母さん、それから瑞樹の声が聞こえてきて。


「え……?」


どうして……。
父さんも母さんも瑞樹も、みんないなくなったはずなんじゃ……。

呆然としながらも、僕は声のする方へと歩いていく。

そして、そこに広がった光景に思わず目を見張った。

……父さんも母さんも瑞樹も、みんながそこにいた。