「一樹、大丈夫か……っ⁉」
そのときだった。
僕の名前を心配そうに、どこか焦ったように呼ぶ声が聞こえたのだ。
父さんと、母さん……?
やっぱり、亡くなったって言うのは、嘘だったんだ……!
そんな希望を胸に、僕は顔をあげる。
だけど、そこにいたのは父さんと母さんじゃなかった。
母さんの妹である、三橋優穂さんと秋良さん夫婦だった。
「すみませんっ!染野美穂たちは、大丈夫なんですか……っ⁉」
「誠に残念でございますが、つい先ほど、美穂さんも息を引き取りました……。
瑞樹くんと浩司さんは、すでにもう……」
「そんな……っ」
橋本さんに声をかけた優穂さんは、話を聞いて泣き崩れてしまった。
それからの記憶は、このときの僕ですらもほとんど覚えていない。
お葬式のときも、周りの人たちのすすり泣く声が聞こえる中、僕は涙を流さなかった。
覚えているのはそのくらい。

