「……っ、うう……。
い……、一樹、くん……っ」
「……っ」
な、なんとか呼べた……っ。
恥ずかしすぎて、胸の前でぎゅっと両手を握りしめ、目をつむりながら言った。
ま、まともにそ……、一樹くんの顔、見れそうにないんだもん……っ。
名前を呼んでから、おそるおそる目を開けてみる。
すると、一樹くんは片手で口をおさえながらそっぽを向いていた。
こころなしか、その頬は赤くなっているような気がする。
「一樹、くん……っ?」
「……、ごめん、こんなことして」
「……?」
一樹くんの発言を不思議に思っていると、私のそばについていたもう片方の手を、そっと離した。
あ……。
さっきよりも物理的な距離が遠くなってしまって、少しだけさみしくなった。
「行こっか、リビング」
「……うんっ」
染野くんの言葉で、私たちはリビングへとつながる戸を開ける。
隣に並ぶ染野くんの横顔をふと見上げては、好きだなぁ、なんて思った。

