彼は流しの前に立っていて、その手には食器とスポンジが握られていた。


その食器とスポンジには、泡もついていて。


……もしかして……。



「食器……、洗ってたんですか?」

「え?
ああ、昨日の夜から洗ってなかったから」



さっき始めたばかりだけど、と続けた。


目を覚ましてすぐに聞こえた物音は、染野くんがここに移動したときの音だったのかな。



「ありがとうございます……っ!」



ごめんなさい、とは言わなかった。


きっと、染野くんならあやまらなくていい、って言うと思ったから。


それに、さっきの言葉を聞いていなかったのか、って呆れられる可能性もあるし……。