「ただいまー……」



心なしか少し小さくなってしまう声で、家の中に呼びかける。


靴を脱ぐと同時に、まだ靴がないことに気付き、染野くんはまだ帰ってきていないのだと悟る。


部活があるのかな……?


染野くんの部活がある日も、把握しておかなきゃな……。


……っ、でも、今日はまだ帰ってきてなくてよかったかも……。


今日一日、今朝の出来事を何度も思い出しては体温が上がる、というのを繰り返してしまっていた。


ただのアクシデントだって、事故だって分かっているのに、こんなに意識するなんてばかみたいだけど。


でも、私にとってはそのくらいの出来事だったのだ。


染野くんは、私にとって好きな人なんだから……。