「今年のトップも、黒鉄琥珀なんだってな?」



玄関で靴を履いていると、二階からちょうど下りてきたお兄ちゃんが珍しく私に話しかけてきた。



「乱闘騒ぎもあって怪我したって聞いたけど、どうせならもう喧嘩が二度とできなくなるくらいボコボコにされればよかったのにな。つまんねぇの」


「…トップになったのは琥珀先輩だけじゃないよ。私の友達の月島星奈も、同票でトップになったから」


「…は?女?ぷっ、あはは!どうしちまったんだよ。弱い女をトップにするとか、おまえの学校のやつらみんなバカだ…」



パンっと初めてお兄ちゃんの頬を叩く。



「お兄ちゃんなんかよりも星奈はずっと強いよ。力はないけど、意思は誰よりも強くて、人の心を変える力がある。力だけで人はついてこないよ。恐怖で人を支配したって、いつかは崩れてしまう。悔しかったなら、自分がどうして負けたのかまずはよく考えなよ。それで変わるんだよ。昔のお兄ちゃんだって、元は弱かったただの少年なんだから」



私がまだ幼稚園児だった頃のお兄ちゃんには、人を支配するくらいの強さはなく、今とは別人のように優しかった。


それなのにだんだんと体格がよくなっていき力がついてくると、お兄ちゃんは力で人を言いなりにするようになった。