別室で今までされていたことの全てを話した。
 このまま中学まで乗り切ろうと思っていたが、さすがに犯人扱いはごめんだ。

 でも、次に言った先生の一言で私の今の人間不信ができあがる。
 「ねぇ。西川さん。西川さんのお家がものすごく大変なのは知ってるよ。でもやっていいことと言っていいことと、区別はちゃんとつけようね。」
 「だからお願い西川さん松下さんの教科書返してあげてくれないかな?」

 …家のことに同情しないで。ほんとにうざい。
 何も知らないくせに。

 両親も親戚も誰もいなくて、児童保護施設から学校に通っていじめにもあってる私の気持ちなんて誰にもわからない。

 もう状況も理解できずに私はこの部屋を飛び出した。

 みんなの視線がすごく怖かった。

 今までは女子だけの陰湿ないじめだったけど、まさかここまでになっていたとは思わなかった。

 今までは男子がいれば被害に遭うことはなかったのに、、
 さすがに小学生の私が先生から逃げられることはなくて、校庭で捕まった後さんざんに怒られた。

 あとでクラスメイトが噂していた話だが結局私の引き出しから松下の教科書が見つかったらしいと。みんなしてすごい嘘をつくものだな。

 なんて理不尽な世界だろう。

 翌日から私は学校に行くことはなかった。

 児童保護施設の人には学校行きたくないと言ったらとても困った顔はしてたけど、申し訳ないが私は折れなかった。

 その次の年から私が里親に預けられたのはそういうこともあってだと思う。

 厄介払いだろう。

 でもその里親は子供を救いたいとか子供好きとかいう雰囲気はゼロだった。むしろマイナスだった。
 ある程度育てて雑用や金を儲けるため。
 そのために何度被害にあってきたか。

 でもその親はとても頭がいいのかきちんと警察に訴えられたりしないよう、腕や足には傷をつけられることはなかったけど、このひねくれた性格もうねった髪や汚い肌もあの親のせいだ。

 小学校を卒業してからは偉い人になってお母さんにお金を還元したいと言ったらすぐに県立の遠い中学に受験させてくれた。

 そして安すぎるアパートの一人暮らしが始まった。
 情報的には親と同居ということになっているけど、もちろんのこと来たこともないしこちらから帰ることもない。

 そのアパートに小学生六年生の最後のほうに初めて一人で一日生活して感じた。

 私の、一人だけの世界だ。

 とてつもない開放感。

 そして、小学生の苦い思い出は、里親に引き取られてすぐの頃に学校で描いた里親に渡していない似顔絵と共に引き出しにしまった。