―西川美織―中学一年―夏―

 憂鬱だ。
 生い茂った木にセミの声が鳴り響く通学路。ちょくちょく木陰から漏れた日光が痛い。

 車や電車の音が聞こえることはないこの田舎ぶりだ。どうせ学校へ行っても効かない扇風機が回っているだけ。

 これがまた私をよりイライラさせるのだ。エアコンくらいつければいいのに……。

 そんなことを思いながら早い足取りで学校へ向かう。